脂肪肉腫
はじめに
“脂肪肉腫”には本質的に良性であるものから悪性、つまり、より活動性が高く、再発や転移を起こしやすいものまで、幅広い悪性度の腫瘍が含まれる。脂肪肉腫にはいくつかの組織亜型があり、それぞれの亜型の特徴や病態に応じて適した治療と経過観察が行われる。脂肪肉腫に対する評価法や治療法の多くは、原則的に他の軟部肉腫のものと同様であるが、脂肪肉腫には特有の多くの特徴があるので、脂肪肉腫の評価と治療には特別な考慮を必要とする。脂肪肉腫の治療には多職種チームによる取り組みを必要とし、肉腫治療の経験が豊富な病院で行われるべきである。
背景
他のがんと比較し、軟部肉腫は比較的まれである。アメリカ合衆国では、およそ11000例の軟部肉腫が毎年新たに診断され(ACS 2012)、それは新たに診断される全腫瘍の約1%に相当する(Lewis 1996)。脂肪肉腫自体は軟部肉腫の約9.8%から18%を占めており、その発生頻度は悪性線維性組織球腫についで2番目である(Peterson 2003, Enzinger 1995)。(訳者注:2013年改訂のWHO軟部肉腫診断基準では、従来“悪性線維性組織球腫”と呼ばれていた腫瘍は、粘液線維肉腫や多形型平滑筋肉腫、未分化肉腫などに再分類され、“悪性線維性組織球腫”の名称は原則的に用いないことになっている。そのため、近年“悪性線維性組織球腫”の発生頻度は低下しており、2010年度の日本整形外科学会骨軟部腫瘍委員会編:全国軟部腫瘍登録一覧表では、脂肪肉腫が最も発生頻度の高い軟部肉腫となっている。)
脂肪肉腫は脂肪に分化することができる原始的な細胞由来の腫瘍である。脂肪肉腫はおもに成人発生の腫瘍であり、その発症のピークは40歳から60歳で、男性の方がやや発生頻度が高い(Enzinger 1995)。脂肪肉腫が小児に発生する場合、10代で発症の頻度が高い傾向がある(Coffin 1997)。成人でも小児でも四肢軟部の深層、とりわけ大腿の深層 が好発部位であり、その比率は50%以上である(Coffin 1997, Pisters 1996)。大腿発生例におけるもっとも一般的な症状は、ゆっくりと成長する無痛性の腫瘤というものである。患者がその部位に軽微なけがをした時などに、初めて腫瘍の存在に気付くことが多い。時間が経っても消え去らない硬い腫瘤を主訴として病院を受診する肉腫患者の写真が多い。不幸なことに、肉腫患者の写真の多くは最初“病気”であることに気付きにくいため、診断と治療の開始が遅れることがある。
脂肪肉腫はR. Virchowによって1857年に初めて文献報告された。1944年にArthur Purdy Stoutは“腫瘍の中で最も奇妙で風変わりなものの一つは脂肪形成細胞の腫瘍である。脂肪系腫瘍の奇妙な成長様式、驚くべき大きさ…そして、多くの他の特徴が脂肪系腫瘍をとても興味深いものとしている”と書いている。詳しくは、以下の文献を参照のこと。R. Virchow, "Ein fall von Bosartigen zum Theil in der form des Neurons auftretenden Fettgeschwulsten," Arch A Pathol Anat Phys, 1857, 11: pp 281-288 および "Liposarcoma—the malignant tumor of lipoblasts", A. P. Stout, Annals of Surgery, 1944; 119( 1): pp 86-107.
脂肪肉腫の特徴の一つは腹腔、とりわけ後腹膜腔に発生する傾向があることである。症例の約1/3はこの部位に発生する(Peterson 2003)。腹腔内・後腹膜腔発生の場合、脂肪肉腫の存在は他の部位に発生した場合に比べて明らかになりにくい。たとえば大腿と比較し、後腹膜腔はかなり大きな体積の腫瘍を許容できるので、腫瘤は見つけられたとしても、発見が遅れることが多い。また、腫瘤が臓器を圧迫することにより、尿路や腸の閉塞症状が主訴となることもある。後腹膜腔に存在する脂肪肉腫の治療はとりわけ困難である。
上述の部位に加え、脂肪肉腫はそのほかの多くの部位に発生しうる。約10%の症例が上肢に発生し、約5%が頭頸部に発生する。その他には、あまり一般的ではないが、精索、腹腔内、腋窩、外陰部そして乳房などに発生することもある。大半の脂肪肉腫は前駆病変からではなく、新規発生すると考えられているが、乳房発生例は例外的に葉状嚢肉腫から発生している可能性がある(Donegan 1979, Austin 1986)。脂肪肉腫が良性の脂肪腫から発生することはない。
病歴と身体所見
多くの脂肪肉腫患者の写真は腫瘤を主訴として受診する。何らかのけががなければ、通常、脂肪肉腫は無痛である。前述のとおり、発生部位にもよるが、脂肪肉腫は非常に大きくなりうる。脂肪肉腫は触診上、軟らかくてぼってりした、または硬い腫瘤として認識される。どの程度腫瘍が成熟した脂肪に似ているか、どの程度組織学的に高分化であるかにより腫瘤の硬さは異なる。早い段階で巨大な良性の脂肪腫と脂肪肉腫を見分けることが重要である。悪性を示唆する所見は腫瘤の大きさが5cmを超えること、深部発生であること、硬いこと、下層の組織に癒着するなどして可動性が乏しいことである(Sim 1994)。どのような腫瘤であっても、十分な診察が必須であり、患肢に加えて胸部、腹部、骨盤部に対しても、細心の注意を払う必要がある。
脂肪肉腫の画像検査
注意深い病歴聴取と診察の後に画像検査を行う。四肢の病変に対しては、通常のX線撮影が最初に行われる(Sim 1994)。X線撮影は骨が腫瘍に巻き込まれているか否か見分けるのに役立つ。通常は、続いてMRIが造影ありとなしで行われる。脂肪肉腫のMRI所見は非常に特徴的で、生検実施前に診断を推測可能なこともある。腫瘍が正常脂肪に似ているほど(言い換えると腫瘍が“高分化”であるほど)MRIで正確な診断を下せる可能性が高くなる。図1を参照のこと。
脂肪肉腫はMRIで境界明瞭かつ分葉状の像を呈する傾向がある(Arkun 1997)。造影効果は腫瘍の分化度によって異なる。高分化型脂肪肉腫はほとんど造影されず、一方、より悪性度の高い円形細胞型、多形型そして脱分化型脂肪肉腫はよく造影される。中間悪性度である粘液型脂肪肉腫は、不均一な組織型に一致する造影効果を示す(Arkun 1997)。そのほかの脂肪肉腫に特徴的な所見は、厚い線維性隔壁、結節性構造そして脂肪抑制画像における造影効果である(Peterson 2003)。加えて、出血部と壊死部がみられることがある。図2参照。
脂肪肉腫の病期分類と生検
診察と画像検査から肉腫が疑われる場合、病期分類を決めるための検査と生検を行う必要がある。これらの検査は、腫瘍の性質と、もし転移がある場合には、どの程度腫瘍が進展しているかを判定するのに役立つ。これまでに述べた画像検査は、病期分類を決める上でとても重要なものである。加えて、肺はもっとも多い転移部位であるため、胸部レントゲン写真と胸部CTは定期的に行われるべきである。脂肪肉腫の場合、後腹膜腔と腹腔内は比較的一般的な転移先であるので、腹部CTも推奨される。血算、血沈そして生化学を含む血液検査は必須である。これらの検査により、腫瘍により引き起こされる全身反応を把握することができ、また、治療効果判定を行う際に必要となる治療前情報が得られる。
生検は、 確定診断を下すために必要な腫瘍組織を採取する方法であり、非常に重要である。腫瘍の組織像(顕微鏡で腫瘍がどのように見えるか)を観察することにより、腫瘍の病態に関する最初の手がかりが得られる。必要な腫瘍組織は、吸引針生検、切開生検もしくは切除生検で得られる。切開・切除生検術は手術の一つであり、通常は手術室で行われる。切開・切除生検により、病理診断のための組織標本を多く採取することが可能であるが、切開・切除生検はしばしば不要なことがあり、適切でないこともある。多くの軟部肉腫は容易に触知可能であり、その場合、針生検で事足りることがある。放射線科医によるCTガイド下針生検もしばしば行われる。切開生検術は時々、十分な組織標本を得るために必要となる。切開生検術では、皮膚に切開を加え、病理診断のために腫瘍片をいくつか採取する。適切な病期分類と組織診断の後に、よく計画された最終的な切除術が行われることが望ましいので、非常に珍しい例外を除いては、切除生検術(生検時にすべての腫瘍を取り除くこと)は肉腫が疑わしい場合は避けるべきである。
脂肪肉腫の病理
生検や切除によって腫瘍組織を採取した後、顕微鏡を用いて組織診断を決定するための病理検査が行われる。病理医は、得られた腫瘍標本から診断を下すのを助けるために、多くの特殊な検査を行う。そのため、生検の最終診断を得るためには数日から時には数週間を要することもある。
世界保健機関(World Health Organization, WHO)は脂肪肉腫を4つの組織亜型に分類している:高分化型脂肪肉腫(もしくは異型脂肪腫様腫瘍)、粘液型脂肪肉腫、多形型脂肪肉腫そして脱分化型脂肪肉腫である(Christopher 2002)。脂肪肉腫は幅広いバリエーションを持つ腫瘍であり、個々の組織亜型はそれぞれに特有の性質を持っている。表1はそれぞれの組織亜型についてのまとめである。図3と図4も参照のこと。
高分化型 | 異形脂肪腫様腫瘍を含む もっとも一般的な組織亜型である(脂肪肉腫の50%を占める) 低悪性度で、転移はしないが、局所再発しうる 脱分化の危険性あり |
粘液型 | 中間悪性度である 円形細胞成分を含むものは、高悪性度である 小児における最も多い組織亜型である 円形細胞成分を有する症例では、特に転移の危険性が高い |
多形型 | もっともまれな組織亜型である(脂肪肉腫全体の5-10%) 高悪性度である 悪性線維性組織球腫や癌腫、悪性黒色腫に類似した組織像を呈することがある 局所再発や転移の危険性が高い |
脱分化型 | 高分化型脂肪肉腫に合併して発生する高悪性度肉腫である(脱分化成分は悪性線維性組織球腫(未分化肉腫)や線維肉腫様の組織像を呈する) 後腹膜腔に発生することが多い 転移の危険性がある |
脂肪肉腫においては、数多くの細胞学的な異常が知られている。高分化型脂肪肉腫では、12番染色体の長腕13-15領域の異常がみられ、また、同様の異常は脱分化型脂肪肉腫でも見つかっている。(Rubin 1997)。おそらくもっとも特徴的な遺伝子異常は、粘液型脂肪肉腫でみられるものである。その異常とは染色体相互転座であり、2つの染色体の間で遺伝子が入れ替わることを意味する。粘液型脂肪肉腫においては、12番染色体と16番染色体の間で相互転座がみられる。その結果、TLS-CHOP(訳者注:FUS-CHOP, FUS-DDIT3とも呼ばれる)と呼ばれる融合遺伝子を生じ、それが腫瘍形成に働くとされている。この特異的な染色体転座とそれに伴う産物であるメッセンジャーRNAとタンパクは粘液型脂肪肉腫でのみ見付かっており、その検出は診断に有用である(Rubin 1997)。
一通りの検査を通じて、腫瘍の特徴を明らかにしたら病期分類は終了であり、適切な治療計画を立てることができる。表2は、骨軟部腫瘍医によって広く使用されている、骨軟部肉腫のための病期分類である(Enneking 1980)。
病期 | 悪性度 | 発生部位 |
IA | 低悪性度 | コンパートメント内(骨内もしくは腫瘍発生部位の筋区画内に限局) |
IB | 低悪性度 | コンパートメント外 |
IIA | 高悪性度 | コンパートメント内 |
IIB | 高悪性度 | コンパートメント外 |
III | 悪性度を問わず転移有り | 悪性度を問わず転移有り |
脂肪肉腫の治療
脂肪肉腫は他の軟部肉腫と同様に、外科的切除が第一選択である。手術の主な目的は、腫瘍の完全切除と再発の防止である。大抵の場合、この目的を確実に達成するために、広範切除術あるいは根治的切除術が行われる。表3を参照のこと。
腫瘍内切除 | 掻爬 腫瘍部分切除 |
辺縁切除 | 顕微鏡で観察すると、腫瘍遺残の可能性がある |
広範切除 | 腫瘍と腫瘍周囲の正常組織を切除する |
根治的切除 | 切断術を含む、全コンパートメントの切除 |
かつては切断術が肉腫に対する外科的治療であったが、今日では多くの場合、患肢温存術が行われる。肉腫の研究が進み、また放射線療法が発展したことで、多くの症例で患肢温存術が可能になっている。(訳者注:化学療法の発展も患肢温存率の向上に寄与していると考えられている。)その進歩により、原発性軟部肉腫の患肢切断術の頻度は、50%以上から 約5%に減少した(Spiro 1997)。患肢温存術を行う場合、腫瘍の切除という主目的は妥協してはならないし、原則として、温存した患肢の機能は、切断肢に装具を装着した場合を上回るべきである。患肢温存術を用いても、患肢機能の低下は生じうることを知っておく必要がある。術後の患肢機能は、腫瘍の大きさと発生部位によって大きく異なり、腫瘍と一緒に合併切除する正常組織(例:筋肉、腱、神経など)の影響を受ける。腫瘍切除後に生じた欠損組織の再建によって、切除に伴う機能低下を最小限にとどめることが可能な例もある。図5を参照のこと。
手術と放射線療法を組み合わせた治療によって、85-90%の症例が局所再発を生じないようになったが (Spiro 1997)、放射線照射の時期を術前術後のどちらにするべきか、については意見が分かれるところである。術前照射の有利な点は、より絞り込んだ領域へのより少ない線量の照射でよい点である。加えて、腫瘍の大きさが縮小することで、手術が技術的に行いやすくなることもある。不利な点は手術合併症、とりわけ手術創に関した合併症が増加することである。Pollack(1998)らは、創傷治癒に関する合併症は術前照射症例の25%にみられる一方、術後照射症例では6%にしかみられないと報告している。優れた治療成績と晩期合併症発生が少ないことより、術後合併症の発生率が高くても術前放射線療法の方が望ましいという意見がある (Virkus 2002)。脂肪肉腫治療における化学療法の役割は現在でも議論の対象となっており、多くの場合、個々の症例に基づいて治療法が選択される。(訳者注:一般的に、欧米では軟部肉腫に対する手術の補助療法として化学療法よりも放射線療法が頻用されるのに対して、日本では放射線療法が敬遠される傾向があり、相対的に化学療法が選択される頻度も高い。個々の症例に基づいて適した補助療法が選択される。)
今まで述べてきたように、脂肪肉腫に関して一般的に言われていることは、個々の腫瘍の臨床経過は、その多くが組織学的亜型に左右されるということである(上記参照)。手術と放射線療法で治療した場合、高分化型脂肪肉腫の局所再発率は10%未満であり、遠隔転移率はほぼ0%である (Zagars 1996)。対照的に、多型型脂肪肉腫は約1/3の症例が再発し、約40%の症例が遠隔転移する。脂肪肉腫の5年ならびに10年生存率は、高分化型脂肪肉腫でそれぞれ100%と87%、粘液型脂肪肉腫で88%と76%、多形型脂肪肉腫で56%と39%である (Zagars 1996, Chang 1989)。
局所再発するかどうかは、手術時の切除縁に腫瘍細胞が認められるかどうかに大きく影響され、切除縁に腫瘍細胞が存在する場合、局所再発率は高くなり(Sadoski 1993)、したがって、満足のいく結果を得にくくなる(Spiro 1997)。症例によっては、切断術はいまだに肉腫患者の写真の治療選択肢の一つである。切断術の目的は肉腫の完全除去であるが、転移病巣に対してその目的を達成するのは困難であり、また局所再発を完全に防げるわけではない。切断術が必要な場合、切断後装具の使用が必要となる。どのような装具を用いるかは、切断を行う部位に大きく依存する。端的に言うと、より多くの関節を温存できた方が、患肢機能は良い。義肢使用への移行を成功させるためには、見識豊かな義肢装具士と一緒に術後断端の適切な処置や歩行訓練などの入念な理学療法プログラムを行うことが必要であるが、もっとも重要なのは、患者が真剣に一連の治療に参加することである。
経過観察
腫瘍が切除され補助療法が終了した後も、局所再発と遠隔転移を速やかに検出するために経過観察を継続する必要がある。注意深い診察と共に、患肢のレントゲン写真、胸腹部、場合によっては骨盤部を含めた画像検査(通常はCT検査)が行われる。このような経過観察は患者の生涯にわたって何らかの形で続けられる。もし転移や再発が発見された場合、それに応じた治療が行われる。
放射線治療後には、 放射線照射後肉腫を発症することがある。放射線照射前は腫瘍がなく“正常”と判断されていた部位に、放射線照射後に新たに肉腫が発生した場合、放射線照射後肉腫と呼ばれる(Arlen 1971)。放射線照射後肉腫は、早ければ放射線療法の2-3年後から、長い場合には30年後に発生する場合もある。放射線照射後肉腫のもっともよくある組織型は、悪性線維性組織球腫(未分化肉腫)(70%)であり、多くの場合、高悪性度腫瘍である(Enzinger 1995)。放射線照射後肉腫の生存率は5-26%と報告されている(Robinson 1988, Laskin 1988)。
まとめ
一口に“脂肪肉腫”と言っても、さまざまな悪性度の腫瘍が含まれ、その病態は組織亜型ごとに異なる。その治療法は、基本的にその他の軟部肉腫と同一であり、大まかに言うと、手術と放射線療法の併用である。そして、それに化学療法が加えられる場合がある。(訳者注:日本では欧米と比較し、放射線療法が敬遠される傾向があり、手術と放射線療法の併用が日本における標準治療とは言い難い。日本における脂肪肉腫に対する標準治療は、手術であり、症例に応じてそれに化学療法、放射線療法のいずれか、もしくは両者が併用されることがある。また、温熱療法など他の種類の補助療法が併用される場合もある。)患者にとって重要なことは、再発と転移の徴候を見逃さないように気を配り、新たな徴候があれば早めに医師に相談することである。脂肪肉腫は、軟部肉腫としては典型的ではない局所伸展、再発や転移様式を示すことがあるので、とりわけ注意が必要である (Vassilopoulos 2001, Linehan 2000, Pearlstone 1999)。
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20歳男性の左鼡径部から大腿に発生した巨大であるが比較的均一で、境界明瞭な病変のMRI軸位断と冠状断。この分葉状の所見は、巨大な良性脂肪腫と高分化型脂肪肉腫に特徴的である。
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20歳男性の左鼡径部から大腿に発生した巨大であるが比較的均一で、境界明瞭な病変のMRI軸位断と冠状断。この分葉状の所見は、巨大な良性脂肪腫と高分化型脂肪肉腫に特徴的である。
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41歳女性、大腿後方区画に存在する粘液型脂肪肉腫の軸位断T1強調画像とSTIR画像である。この病変は不均一な像を呈しており、腫瘤周囲の皮下脂肪には似ていない。また、注目すべき所見は、著明な浮腫の存在である。これらの所見は非常に強く悪性を示唆する。
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41歳女性、大腿後方区画に存在する粘液型脂肪肉腫の軸位断T1強調画像とSTIR画像である。この病変は不均一な像を呈しており、腫瘤周囲の皮下脂肪には似ていない。また、注目すべき所見は、著明な浮腫の存在である。これらの所見は非常に強く悪性を示唆する。
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高分化型脂肪肉腫の手術標本(MRI画像は図1を参照のこと)。外観は成熟脂肪組織に類似している。
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顕微鏡下では正常脂肪組織に類似した’印環’型細胞がみられる。高倍率で観察すると、脂肪肉腫で特徴的にみられる脂肪芽細胞が紡錘形細胞に隣接して観察される。
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顕微鏡下では正常脂肪組織に類似した’印環’型細胞がみられる。高倍率で観察すると、脂肪肉腫で特徴的にみられる脂肪芽細胞が紡錘形細胞に隣接して観察される。
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粘液型脂肪肉腫の標本割面の肉眼像。正常脂肪様の領域が存在する一方で、図3にみられるよりもより悪性度が高いことを疑わせる、厚い線維性隔壁と不均一な色調がみられる。
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組織学的に細胞密度が高く、核異型が強く、核分裂像が多いことは、高悪性度腫瘍であることを示している。高分化型脂肪肉腫と比較し、‘印環’様細胞はほとんど見られない。
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巨大脂肪肉腫に対する患肢温存手術の術中写真。神経本幹(写真中央)に近接している場合、広範切除術の達成は困難である。しばしば、術前放射線療法と化学療法の片方もしくは両方が行われるが、その目的は、腫瘍を縮小させ、主要な神経や血管からの距離を稼ぐことで、腫瘍の完全切除という目的を妥協することなく、患肢温存手術の成功確率を高めることである。